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竜星 涼 × 祐真朋樹がパリコレを語る!「モードな座談会」前編

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スタイリスト祐真朋樹さんと、ファッションマニアとして知られる俳優・竜星 涼さんのスペシャルトーク企画「とびきりモードな緊急座談会」。メンズノンノ誌面ではダイジェストの掲載でしたが初対面ながら実に濃かった対談の“完全版”をどうぞ!

 

 

 

一つの挑戦としてのパリコレクション

祐真 竜星くんが2016年秋冬のヨウジヤマモトのショーに出たのはどんな経緯から?
竜星 完全なオーディションでした。ある種、挑戦というか。身体が勝手に動いて、英語もフランス語もわからないのにいつの間にかパリにいた!(笑)
祐真 いいね~。ヨウジの服は知っていたんでしょう?
竜星 大好きです。日本人としてコレクションを歩くなら最初はヨウジと思っていました。僕は母の影響でファッションに興味を持ちましたが、母も好きなので特別な思い入れがありました。
祐真 お母さんはパリのショーに来たの?
竜星 いいえ、オーディションに受かるかどうかわからなかったので…。自分自身も「受からなかったら観光して帰ればいいや」という気持ちで、とりあえず行ってみようと。とにかく勢いにまかせてだったので、シャルル・ド・ゴール空港に着いたはいいけれど自分のバッグがどこから出てくるのかすらわからず(笑)。ホテルへも勘で電車に乗って「あった! よかった!」(笑)。そして、せっかくパリに来たんだからと、クレイジーホース、ムーランルージュ、リド… キャバレーでショーが見たい! って寝ないで詰め込んで遊ぶわけです。
祐真 22、23歳くらいってそうなるよね(笑)。
竜星 スマホの充電がなくなり、誰かれかまわず「ここに行きたい」とジェスチャーでホテルの住所を尋ねてようやく戻ることができたり(笑)。強くなりますよね。オーディションにも受かってランウェイを歩けて、感無量でした。

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ヨウジヤマモト 2016年秋冬コレクションより

祐真 出演を依頼されたわけじゃなかったんだね。
竜星 もしよければオーディションに、という感じだったので「じゃあ行きます」と。自腹です。そしてオーディション会場には、ショーの常連やパリの百貨店の広告に出ているような一流モデルが揃っているんです。「うわ、みんな身長が高い!」とか思いながら順番を待っていると、有名モデルでもフィッティングすらしないまま“Good Luck”と言われて落とされていて…。これはヤバイなと。
祐真 いい経験をしましたね。
竜星 受かった興奮の冷めやらぬままショーに出て。バックステージに戻った終盤に『スタンド・バイ・ミー』のサビの部分がかかったんです。山本耀司さんが挨拶をして、お客さんが帰るあたりで大音量になる。粋だなーと思いました。
祐真 帰りがけに音楽のボリュームが上がることは多いですね。慌ただしい中で余韻を強める効果があって、そのショーの記憶がぐっと鮮明になる。
竜星 夢がかなった。一つの挑戦が終わったんだ、と感傷的になった瞬間とシンクロしました。
祐真 今後『スタンド・バイ・ミー』を聴くたびにその情景が思い浮かぶわけだ。

あこがれのナオミと同じランウェイに登場

竜星 同じシーズンのY-3には仕事があって帰国しなければならず、出られなかったんです。それで、次の年はY-3をめがけてこれまた自腹で渡航して。
祐真 いいね(笑)。
竜星 Y-3はメンズとレディースが一緒のショーなのでまた別の経験ができると思ったんです。女性モデルと歩く世界観も感じたかったですし、アディダスというスポーツウエアの要素もあるからまた違う雰囲気で。
祐真 軽くなるよね。
竜星 次のドルチェ&ガッバーナは招待でした。東京でデザイナーのおふたりに会うチャンスに恵まれて、その際に「ミラノのショーを歩いてください」とオファーされて。印象的だったのはショー当日、リストを見たら自分がラストから5体前だったんですね。

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Y-3 2017年秋冬コレクション/ドルチェ&ガッバーナ 2019年春夏コレクション

祐真 見せ場ですね。
竜星 で、ラストにはナオミ・キャンベルがいる。「何この状況?」ってなりますよね(笑)。前シーズンのルイ・ヴィトンのショーでナオミとケイト・モスとキム・ジョーンズが一緒に登場したのを見て「生で見てみたかった!」と思っていたので、かなりテンションが上がりました(笑)。このショーは本当に素晴らしくて、いろいろな世代のモデルが登場して、そのたびに拍手が湧き起こっていました。パリのヨウジやY-3とも違った、ドルチェ&ガッバーナというラグジュアリーブランドのショーをミラノで経験できたのは最高でした。
祐真 この白いルックですね。
竜星 一瞬でした。ナオミ以外にもラッパーのウィズキッドが出てきたり。
祐真 ドルチェの演出もモデルというよりは普通の人を選んだり、そのあたりが今おもしろいというか、変わってきたことかもしれないね。ランウェイを歩いてるとき会場はけっこう見ているの?
竜星 僕は一点を見て歩いてました。ヨウジのときはパターンナーに「今年でよかったね、今回のショーはいつも以上によかったから」と言われました。ランウェイを長く歩く演出に変えたらしくて。
祐真 山本耀司さんは、一般人を起用するデザイナーの元祖ですよね。1990年に初めてパリに見に行ったときも、今ではセレブと言われるミュージシャンを起用していて。ブランキー・ジェット・シティがちょうど“イカ天”という音楽番組で勝ったときで、その次週までの間にパリコレに出演していて「かっこいいことをやるな」と思いました。
竜星 耀司さんは、何かを貫いている人、自分は役者ですが、何か違う本業を持っている人、人間的な二面性や多様性をリスペクトしている気がします。
祐真 それはすごくあると思う。コム・デ・ギャルソンもそういうところがあって、おもしろいよね。

インフルエンサーがいち早く登場した
N.Y.コレクション

竜星 祐真さんはいつから海外コレクションに行かれているんですか?
祐真 僕は1990年ごろから、かれこれ28年ぐらい行ってます。
竜星 パリもミラノも?
祐真 パリもミラノも両方に行っていました。最近またメンズとレディースが一緒にショーをやることが増えてきて、ミラノに行く機会は減りつつあります。
竜星 合同のファッションショーは、パリで多くなってきましたよね。N.Y.は?
祐真 2005年から2012年まではマメに行っていました。トム・ブラウンがパリでショーをやるようになってから行かなくなりましたね。2005年くらいにアレキサンダーワンやフィリップ リムなどが出てきてN.Y.デザイナーのブームがあったんですが、N.Y.はパーティが多くてショーというよりイベントっぽいんです。スケジュールもメンズとレディースが最初から一緒くたで分かれていなかった。
竜星 マーク ジェイコブスもメンズがなくなってしまいましたしね。
祐真 マーク バイ マーク ジェイコブスがなぜかメンズだけN.Y.でショーをしていた時期もありました。N.Y.は自由な感じがあっておもしろかった。ある時期から今ではインフルエンサーと呼ばれる人たちがわっと来るようになって。当時はブロガーの時代でしたが。コレクションといえばかつてはジャーナリスト、ファッション誌の編集長やデパートのバイヤーといった人たちがメインゲストだったけれど、徐々にストリートというか実際に服を買っているような身近な人たちがどんどん会場にやってくるようになった。今やミラノもパリもそういう人たちがたくさんいますが、N.Y.コレクションが早かった気がするね、今思えば。
竜星 ショーが終わったらすぐに買えたりもして、すごいことですよね。

SNSで拡散される“もう一つのショー”

祐真 お客さんにインフルエンサーが増えたように、モデルも有名人の息子を起用したり、セレブリティがランウェイに登場することで会場が盛り上がる、というのは2000年前後から始まっていましたね。それ以上に身近なインフルエンサーが見に来るようになって。PCやスマホから出てきたスターだよね。
竜星 ショーの演出も時代とともに変わっていますか?
祐真 2018年9月のミラノコレクションですごいなと思ったのは、フロントローにそのブランドの服を全身着ている人たちが座っているんです。同じ女性がどのショー会場でもそのブランドの服で来ていたりして、もうそれが仕事なわけですよ。プラダのショーには日本人のAMIAYAもいて、開始前には写真の撮りあいが始まって。インフルエンサー同士が撮影することもあって、すぐにインスタグラムにアップする。これがすごく大事なことになっている。この撮影会で一波あって、それから本番が始まるんですが、フロントローが煌びやかなものだからランウェイモデルが地味に感じたり(笑)。
竜星 “もう一つのショー”ですね。

  • Photo by Adrien Dirand

  • Photo by Virgile Guinadrd

  • Photo by Virgile Guinadrd

祐真 今回のディオールは現代のショーの象徴かもね。会場中央にカウズによるモニュメントがあって、下にはそのシーズンの服を着たセレブやインフルエンサーたちがいて、彼らの撮影会や盛り上がりを僕らは遠巻きに見る。キム・ジョーンズと親交の深いエイサップ・ロッキーヴァージル・アブロー、日本からもバーバル秋元梢ちゃん、村上隆さんがいて。見せ方がすごく新鮮だった。
竜星 今はコレクションの動画投稿も増えましたよね。
祐真 コレクションといえばかつては秘密の儀式みたいなものでプリミティブに服を見に行く行為だったのが、つくづく変わったなと。

憧れる存在があってこそのファッション

竜星 海外コレクションを見ていると、モデルの中でもスーパーモデルはちょっと存在感が違う気がするんですが、どうでしょうか? ベラ・ハディットケンダル・ジェンナーが歩くと盛り上がっているように思います。
祐真 オーラがあると思う。着せる人からヘアメイクをする人まで、みんなのエネルギーを集中させてしまう人がいますよね。見る側も期待するし、会場のエネルギーを一つにしてしまう何かがある。それは巧い、下手とかではなくて選ばれし素質だと思います。
竜星 バルマンのレディースショーのファーストルックにカーラ・デルヴィーニュが出てきたとき、すごい迫力を感じました。バイセクシュアルを公言しているファンキーなセレブモデルですよね。
祐真 僕もインスタでフォローしてます。
竜星 ファッションの世界って、やっぱりセレブが強いのかなと。
祐真 圧倒的な美しさというか、そのときの気分を具現化している人にみんな憧れますよね。誰もが「いいな、近づきたいな」と思う。そんな存在がいないとファッションは成り立たないですよね。

後編はこちら

2018年11月対談/メンズノンノ2019年2月号掲載
Photos:Akira Maeda[MAETTI CO] Hair&Make-up:TAKAI Masaki Yoshinaka[perle] Stylist:Tomoki Sukezane Text:Hisami Kotakemori

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