すぴんおふ連載 磯部磯兵衛物語

第二十一話 〜これはシャツではないで候!?〜

 

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シャツって何で候?

シャツはフランス語では「シュミーズ」と呼ばれ、本来は下着。誕生した13世紀頃はかぶりのワンピースのような形状で、素材は上質な麻だった。

 百年戦争(1337~1453)をきっかけにミリタリーの影響で男性の上着の丈が短くなり、衣服の男女差がはっきりしてくる。14世紀頃から男性服は上衣の「プールポワン」と脚衣の「ショース」の2部位形式に、その下にはシュミーズを着た。16〜17世紀は「ラフ」(ひだのつけ衿)が流行。チュニック型シュミーズは衿もとがフリル状で袖も提灯袖と、フェミニンなデザインだった。大航海時代はオランダスタイルが台頭、ラフや「ファンカラー」(扇形の立ち衿)に続いて肩に沿った平らな衿や大きなレース衿が一世を風靡。17世紀後半になってようやく、現代に近いジャケット・コート、ベスト、パンツの3つ揃えスタイルに移行する。ベストの下にフリルやレースの装飾がついたシュミーズを着て、衿もとには「クラバット」(ネクタイの先祖)を結び、これがシャツとネクタイの原型となる。

 18世紀はイギリスで産業革命、フランスではフランス革命が起こり、近代化が進む。メンズファッションの流行はロンドンのサヴィルロウから発信されるようになり、テールコートにベスト、トラウザーズの現代的なスタイルが完成。19世紀前半のシャツは、取り外し式のウイングカラーにクラバットを巻いた。袖はダブルカフスで、これも取り外しできるものが多かった。フロントは全開ではなくプルオーバー、素材はコットンが主流になる。19世紀後半になるとシャツの衿が折り返されて今のシャツカラーに。台衿の高いハイカラー&フロント全開の現代的なドレスシャツが登場した。ワイシャツ(ホワイトシャツが語源)は、第二次大戦後のアメリカで誕生。衿、カフスともに縫いつけるのが普通になり、1960年代以降はベストを省略した代用として胸にポケットがつく。

 現在のファッションシーンにおいては、スーツやフォーマルに合わせるドレスシャツ、スポーツに由来するボタンダウンのようなカジュアルシャツ、エポーレットや両胸にポケットがついたミリタリーシャツ、デニムやダンガリーに代表されるワークシャツと、シャツは大きく4カテゴリーに分けられる。アロハに象徴される開衿シャツのブレイクに続き、秋に向けてはロングシャツが注目を集めている。

シャツのポイントは衿の形!
名称を覚えよう

オープンカラー 開衿シャツ。第1ボタンのついているものはワンナップカラーともいわれる。台衿のない一枚衿で、繋がっている前見返しの上端を折り返した形。アロハやスポーティなシャツに多く、大ブレイク中。レトロなイメージを演出できる。

ラウンドカラー 衿先の丸い形。女性のブラウスでもおなじみの優しい印象があり、ジェンダーレスな着こなしにも用いられる。イラストのように衿と袖口が白で、身頃が色無地や柄になっているタイプは「クレリックシャツ」と呼ばれる。

スタンドカラー 正式な英語の名称は「Stand-up collar」。立ち衿の総称で衿羽根がなく、折り返しもないことが特徴。バンド状の形状から「バンドカラー」とも。つけ衿時代の名残からクラシックなイメージがあり、ワークシャツにも多い。

磯部流、シャツスタイル!

「秋にブレイクしそうなワイドストライプのシャツ。ベーシックなレギュラーカラーを選び、きれいめなスラックスを合わせ… そろそろ拙者、脱ストリート? 着こなし方はルイ・ヴィトンのルックを参考に片側だけをタックイン。このあえてのラフさがいいんでござる!」

漫画:仲間りょう Text:Hisami Kotakemori
参考文献:『文化ファッション大系服飾造形講座9 メンズウェアⅠ』『文化ファッション大系服飾関連専門講座11 改訂版・西洋服装史』(文化服装学院編) 『ファッションの歴史』(八坂書房)『軍装・服飾史カラー図鑑』(イカロス出版)

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