ジーンズって何で候?
今は「デニム」の呼称が優勢だが、どちらも生地の名前。語源の「セルジュ・ド・ニーム」はフランスのニーム地方で織られたサージ生地のこと。「ジーン」も同じく綾織りの生地で、リベットの補強を施したワークパンツが「ジーンズ」のルーツだ。
デザインは「リーバイス」が主導し、後発の「リー」や「ラングラー」と切磋琢磨して進化する。初期のデニムは洗うとかなり縮んだため、カウボーイは夏の晴れた日に新品を履いて川に入り、履いたまま乾かして身体に馴染ませたという。“ジーンズを育てる”文化のルーツとも言える。1940年代後半に、5ポケットの形が完成。50年代には若者が日常着にするようになり、様々なスタイルと結びついてファッションのマストアイテムに。
60年代、アイビーリーガーにホワイトジーンズが流行。後半はヒッピーの登場でパッチワークデニムがブーム。70年代にかけてはベルボトムが主流だった。70年代後期には「カルバン・クライン」などのデザイナージーンズが生まれ、モードの世界にも浸透してゆく。80年代に入ると、ゆったりした腿から裾にかけてスリムになる“ペグトップシルエット”をイタリアの「ボール」や「クローズド」などが提案し、イタカジブームが起こる。加工技術も躍進してストーンウォッシュ、ケミカルウォッシュなど新しい質感のジーンズが登場。
渋カジブームの80年代後半、古着のジーンズが脚光を浴びる。ビッグE、赤ミミ、ダブルエックス、革パッチなどの古いディテールがもてはやされ、状態のよいヴィンテージの「501」には20万円もの額がついた! 味を出すために洗わずに履き続けたり、転がってアタリを出すなどの“育てる”カルチャーも一般化。古着の高騰に伴いレプリカジーンズが出現してヴィンテージさながらの質感を再現、さらに、自分で育てなくてもリアルなユーズド感を再現する加工技術が次々と生まれ、自分好みのジーンズが簡単に手に入る時代がやってくる。
90年代の前半は、スケーターやヒップホップの影響でビッグシルエットや色の薄いバギージーンズが人気を集める。モード界でもデニムは定番となり、常にコレクションで見られるように。2014年頃からノームコアの影響でリジッドジーンズが流行するが、90年代ブームが揺り返して2016年からは薄い色のジーンズやケミカルウォッシュ、バギージーンズ等が再来。このトレンドは、春夏に向けて顕著になりそうだ。
磯部流 ジーンズスタイル
「ジーンズを誕生させたアメリカに敬意を表して、オーセンティックなアメカジを意識。流行はまだビッグシルエットでござるが、拙者は一周してストレートのパッチワーク。チェックシャツをインして足元はコンバース、スポーツブルゾンでレトロに!」
漫画:仲間りょう 参考文献:出石尚三著『完読ブルー・ジーンズ』(新潮社) Text:Hisami Kotakemori