樅山 敦の歌謡曲が流れるBARBER

6枚目

竹内まりや
『もう一度』

 1981年に一旦活動を休止し、家事の合間に作詞作曲。マイペースに積み上げられた作品のクオリティの高さにびっくりした彼女の夫である山下達郎がプロデュースを担当した84年の復帰作がこれ。音が鳴った瞬間にビーチボーイズばりの夫のコーラスと、ザクザク斬り込んでくるリズムが混ざり合い最高に気持ちいい。曲調はサマーアンセムなシティソウル歌謡曲。西海岸というより東海岸の洗練された楽曲。そうだなぁ、フォーシーズンズ直系の構成パターンにビーチボーイズ風コーラスの応酬、とでも言っておこうかな。
 
 なんだか偉そうでごめんなさいね、僕は、竹内さんはジャンルを問わずいろいろな洋楽を聴きアメリカを旅した女性と感じたんだ。オールディーズはもちろん、アーシーなロックからダウントゥアースなフォークソング、マイアミの海やニューオリンズのお祭り… 好奇心がエネルギーになり、普遍的な音楽ができあがるんだなと。そりゃね、実際に経験しないと風化しない極上のメロディは作れはしないよ。
 
 そしてサウンドだけではなく、曲が進むと徐々にドロドロしてくる歌詞、これも良い! お行儀がいい歌詞じゃないのも竹内さんの独創性。なんだろう、専業主婦が抱える旦那への愚痴をぐっと抑えているのか、それともストレートにぶつけているのか、どうとでも取れるちょっと恐い感じ、僕は好きです。美しいメロディにメッセージを込めて歌う魅力が、同じような思いをした人々の共感を生むんだろうね、核心を突いたメッセージに確固たる自立はあるけれど、はみ出してはいないんだよね、奥ゆかしい日本女性というよりもアメリカの賢い女性みたいだしね。
 
 この楽曲は最高のコミュニケーションから産まれたと思うよ、夫と妻、プロデューサーとシンガーソングライター、男と女の関係性でちゃんと向かい合い、相手の話を聞き、正確に把握し、丁寧に作られた感じがビシビシ伝わる。同年に長女を出産、山下家はハッピーに包まれた。美しいね。そして、独創性こそ普遍なんですね。というわけで、サマーアンセムな女性ヴォーカルによるシティソウルのプレイリストを作っちゃいました、Apple MusicやSpotifyで聴いてみてね。2019年の夏の思い出を作っちゃおう!
 

もう一度竹内まりや
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