沢田研二
『ストリッパー』
70年代、立て続けにヒットチャートに入り込んでいたジュリーこと沢田研二さんが、1981年に叩き出したロカビリー歌謡曲。このセンセーショナルなサウンドは、50年代のアメリカ西部の黒人ロックンロールと白人ヒルビリー(カントリー音楽の一種)をミクスチャーした音楽、そう、エルヴィス・プレスリーがあまりにも有名だね。80年代に入るとイギリスや本場アメリカでもロカビリーを楽しむ若者が急増、世界的に再評価されたんだ。これがジュリーにも刺さって、前世代スタイルの踏襲ではなくアップデートされたロカビリーを誕生させたってわけ。
元々ルールが多い音楽で、ギターはメジャー7とEとAのコードをギャロッピング奏法でとか、ヴォーカルは歌詞の語尾を瞬時にひっくり返すヨーデルみたいなヒーカップ唱法、ベースは弦を平手で叩きパーカッション効果を醸し出すナンチャラカンチャラ… と多岐にわたるが、ジュリーは上手く歌謡曲に落とし込んだ。E、A、Bのマイナーコードで骨太さを演出、ギター音はひずませ、アームを多用し野太いサウンドを奏でている。わかりやすく言うとワイルドにワウン、ワウン鳴ってた。そこにジュリーの艶やかな歌唱力、とにかくシビれたね。
とはいえ「オリジナルじゃない、ロカビリー風でしょ?」と言う人はいた。でもこれでいいんだよ、リアルなんだからと俺は思ってる。50年代アメリカのヴィンテージジャケットはシルエット的に着れないけど、ジュリーというデザイナーが現代の感覚にフィットさせた復刻版なんだってね。アップデートしたんだから、オリジナルかどうかなんてことはほとんど関係ないんだよ。
ヴィンテージロカビリアンは衣装とヘアスタイルにもルールがあって、ウエスタンスーツにリボンタイを合わせていた。西部劇やウエスタン映画で石油王のオッチャンが着てるやつね(石油時代の始まりはテキサス州の油田からなんだって)。ヘアスタイルはフロント高めで両サイドをタイトに、センターバックへ極端になでつけるリーゼント、我々がバーバー用語で“ダックテール”って呼んでる、みやぞんや氣志團のヘアをリアルにした感じだね。ジュリーはここも完全無視で、デニムのセットアップの下にタンクトップ、エルメスのヴィンテージスカーフみたいなものを海賊巻き。映画『パイレーツ・オブ・カリビアン』のジョニー・デップが近いかな。その上からパナマ帽を斜めにかぶり、つり上がって見えるアイメイクで中性的なセクシーさを演出したんだ。盛って盛りまくるジュリースタイルは、妖艶という言葉に尽きる。たぶんだけれど『ジョジョ』の作者はジュリーファンかもしれないね。
みんなもたまにはロカビリーを聴いてみて! セレクトしておくから。